インタビューINTERVIEW
コロナ禍で多くの業界が苦境に立たされていますが、文化芸術界への打撃は特に甚大です。数千の公演等が中止になり、収益・収入が途絶え、芸術家や文化芸術団体は活動の継続自体が困難な状況にあります。このままでは日本の文化芸術の灯が消えてしまうとの強い危機感から、私は文化芸術活動への支援を繰り返し要請し、緊急要望を取りまとめ、関係大臣や関係各所に働きかけを行い、支援策に向けた文化庁の予算を確保しました。
支援策は給付金にすべきだと考えていましたが、助成事業という形となり、その申請手続きが実情に即していない、煩雑であるといったことから、まだまだ支援を必要としている方々に届いていません。支援が効果的に活用されるよう改善を進め、また国として文化芸術を守っていける体制を作りたいと考えています。
これまで日本は「和」の心でもって、元々ある土台に新たな文化を織り交ぜ、文化の多様性をもたらし、新しい日本を構築してきました。これは、神仏習合、儒教や道教の伝来、また明治維新以降のフランスやドイツの大陸法系の導入、戦後の英米法系(コモン・ロー)の影響などにも見られます。そして日本はこうした「知恵」で、試練を乗り越えてきました。
コロナ禍の苦しい状況だからこそ、今後の日本の社会を考え、これまで当たり前と思っていたことを変化させていく必要があると思います。例えば、これまで長年、教育のデジタル化の推進を呼びかけてきましたが、なかなか進展しませんでした。当然、対面授業の重要な部分は残していかなければなりませんが、デジタル対応能力を強化し、その利便性を活用することで、複数の言語対応が可能になったり、視聴覚に障がいがある生徒が学びやすくなったりと、教育の在り方がより良く変化できると思います。
働き方についても、戦後の産業政策は、資源を都市に集約することで効率性を図っていましたが、これを機にリモートワークによって子育てのしやすい地方に移住したり、特定の地域に多様に関わる「関係人口」の拡大・深化、「ワーケーション」という選択肢など、生き方の多様化が進んでいます。こうした新たなパラダイムシフトによって、この試練を乗り越え、さらに地方創生、人口減少や少子化などに対応していくことが重要だと思います。
取材日:2020年11月 ※肩書は当時